作者は インド滞在12年 の 研究者 らしい。
わかりやすく カーストについて、仏教の歴史的意義について 書かれているところがあった。現代の研究者は 日本の僧侶が書いたものより はるかにわかりやすく 教えてくれていると思った。また 現代の研究がそこまで進んでいるのか と 感じた。 この本の定価は860円 2016年6月23日 第一刷発行
第1章 インドの近代とカースト制度の謎
41ページ :そして、こうした旧来のインド社会を特徴づけていたのが、広範な森林の存在です、森はそこに住む部族民たちの生活の場であるだけでなく、不作の年に農民が食料を求めて入る場所であり、出家者が修行のために入る場所であり、また戦いにおいて形勢不利になった豪族が逃げ込んで敵から身を守る場所でもありました。森林の存在はまさに、かつてのインド社会が持っていた流動性を下支えしていたといえるでしょう。
49ページ : 日本の場合は幸い、こうした多様な社会集団の区別はその後、次第に忘れられていきました。ですが、もし日本が当時、欧米列強の植民地だったとしたらどうでしょう。そしてこうした多様な社会集団の区別が、植民政府の手で国勢調査のさい詳細に記録されることによって、日本社会の中に永く残っていったとしたら? イギリス植民地時代のインドで起きたのは、まさにこうしたことだったのです。
第2章 インドの宗教の謎
69ページ : 仏教とヒンドゥー教の違い ちなみに、こうしたインド的世界観から出発しながら、人は苦行のみによって解脱と真理に至ることはないと考えたのが、仏教の開祖ゴータマ・ブッダです。彼は、より世俗的・日常的な心構えである八正道などの「中道」提唱によって、基本的に世俗間と出家のあいだの矛盾をとりはらい、それまでは出家者が独占していた「真理」をより広い社会に解放しようとしました。商工業がある程度発達し都市社会が姿をあらわすと、ブラフマンの言葉の呪術性と拘束力が薄れ、代わりにより広範な人々が世界と人生、あるいは言葉と真理について思考をめぐらすようになったと思われますが、ブッダの思想はその最大の成果の1つだったわけです。なお、商人の宗教として有名なジャイナ教の開祖マハーヴィーラも同時期(前5~前4世紀)に活躍しています。 仏教や原始ジャイナ教は、神観念およびヴェーダ諸聖典の権威を基本的に否定しました。(より正確に言えば、例えばブッダは真理の形而上性・超越性を否定し、真理が神格化されるのを防ぎました。このことは社会的には、一部の集団による真理の独占とそこから生まれる階層差別を否定することにつながりました。)これに対し、ヴェーダ諸聖典の思想が生み出したアートマン=ブラフマンを神として人格化し、最高神への絶対的な信愛(バクティ)と帰依を説いて後世のいわゆるヒンドゥー教の基礎を作ったといわれるのが、叙事詩『マハーバーラタ』に収録された詩篇『バガヴァッド・ギーター』です。基本的に部族間の抗争を描いた長大な叙事詩『マハーバーラタ』は、5世紀頃までにほぼ現行形となったと考えられていますが、その一部である『バガヴァッド・ギーター』は、これより早い1世紀頃に成立したとされています。