信濃毎日新聞に書評が載っていた。インドの現代特に宗教世界についてわからないことだらけだったので 思わず この本に飛びついた。インドで起きるいろんな事件のニュースが報道されるが 自分の想像を超えることばかりで とても理解できないのだ。この本を読むとなんらかの手掛かりが得られそうな気配がした。だから 早速 アマゾンで注文して買った。
まえがきがえらい長い。インドに対する様々な西欧的な先入観を取り外そうという仕掛けと見た。
p12 西洋人は東洋の宗教というものを、古代から変わらぬ智慧の水を湛える深い井戸のように思いたがるが、実際のところ、インドにおける宗教的アイデンティティというものは、特定の社会集団やカーストの習慣、それから父子相続などの社会的要因と分かちがたく結びついていて、そのどれもが現代インド社会と同じ速度で変化しているのだ。
p18-19
代わりに、『9つの人生』が焦点とするのは政治的領域の向こう側、ニュースの見出しの裏側だ。南アジアの多様な宗教伝統の中でも、特に深層に根差し、近現代の人工的に区切られた政治的な枠組みを受け入れない、異端の渾然とした、多元的な宗教的、哲学的な民俗伝統である。これらこそが、ヒンドゥー教とは本質的に異なる存在として失われようとしているものだ。折り重なるように多様な宗教伝統や祭儀、神話や神々が、中央集権的な宗教システムに少しずつ取り込まれていき、今や元々はとても異なる構造をしていた、ユダヤ・キリスト・イスラームなどのアブラハムの宗教にどんどん似通ってきている。
なんと的確な指摘だろうか。と 私は思う。